インドネシアのハラール製品認証に歩み寄るアメリカ
日本のメディアで報道されているインドネシアのハラール法
世界中で動きが高まっている製品におけるハラール認証について、インドネシアも例外ではありません。現在、インドネシアでは任意にハラール認証を得て、ハラールラベルを製品に付けることができるようになっています。この状態に上乗せされる形で、2014年に法律第33号によってハラール法が制定され、ハラール、またはノン・ハラールのラベル付けが義務付けられることになっていて、現在は、その実施規則となる政令案を作成中です。規制対象のひとつに「化学製品」が含まれているので、今回は私どものお客様から、動向について関心があるとのお便りをいただきました。お客様、話題のご提供をいただき、ありがとうございます!
以下のような日本語での関連記事があります。
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/161103/mcb1611030500017-n1.htm
https://www.faircongrp.com/news/regionalinfo/1587/?lang=en
これを見る限り、ハラール対応によるマイナス要素がインドネシアの国内外でかなり懸念されているとのことです。
ハラール法実施にアメリカが協力
ごく最近の関連ニュースを探したところ、以下のようなもの(インドネシア語)がありました。
https://kemenag.go.id/berita/read/506786/indonesia-amerika-jajaki-kerja-sama-sertifikasi-produk-halal
インドネシア商業省によるこの記事を読んでみたのですが、アメリカは懸念というよりも、このことをチャンスにしようとしている印象を受けました。さすが、アメリカですね。何となくお国柄を感じてしまいます。苦境をチャンスに変えるぞ、という意気込みが漂ってきます。
というのも、2018年2月2日(金)、アメリカ商業省はインドネシア宗教省を訪れ、ハラール製品保証執行局(BPJPH:Badan Penyelenggara Jaminan Produk Halal)に対し、ハラール認証における協力を申し出たようです。
ハラール憲法施行と同時に、アメリカ製品が同憲法に準じていることを確約したいアメリカ側が、同法の施行開始時期を尋ねたところ、2019年10月17日に正式に執行されるとハラール製品保証執行局は回答しました。大統領がハラール大統領令にまだ署名していないため、執行局側は同憲法を実施できていないとのことです。ハラール認証をサポートする情報技術システムも現在は準備段階です。
また、ステークホルダーに向けて、執行局の存在を認識させ、インドネシアで製品の流通を行う国々との覚書(MoU)を交わすなどの準備も行っているところです。
ハラール法が施行されるとノン・ハラール表示も義務になる
ハラールとは世界共通の概念であり、「イスラム教によって許された」ことを意味するのですが、ハラール認証に当たっての基準は各国間において基準が異なるというよりは、世界中の認証機関によって基準が異なっているのが現状です。インドネシアのように国が認証機関をひとつに絞っている国もありますが、イスラム教徒が少数派の国においては、認証機関が複数あることが多いようです。
このような現状に基づいてなのか、執行局側は上述の覚書の位置付けについて、大変に重要とのコメントをしています。ハラール認証のシステムと基準の相違によるトラブルを未然に防ぐためなのかもしれません。
興味を引くのが、ハラール認証された製品にはハラールラベルが付けられることになるわけですが、消費者を保護するため、ハラールではない製品にはノン・ハラールラベルを付けることが義務化されるということです。原材料の表示を見るだけでは、ハラールであるかどうか理解することは困難なので、そういった迷える消費者を保護するという意味です。
気になるハラール認証の費用についてですが、現在、作成中である宗教大臣規則の中で規定されるということです。
インドネシア宗教省ハラール製品保証執行局は、アメリカ側の積極的な態度にきっと喜んでいることでしょう。アメリカとの覚書もスムーズにいきそうです。
今後の動向について楽観的な私の考え
日本のメディアでは、否定的な受け止め方がなされていますが、やはり何事も慎重に、最悪のことを考える日本人の真面目な気質がお国柄になってメディアの文面にも表れているような気がします。しかし、変化に対応していかなければならないのは、どの分野においても同じです。早く根回しし、早くハラール対応した者の早い者勝ち市場の時期があるとうことも考えられますので、関係者の方々は早めの対応をお勧めします。
上に書いた私どものお客様は「化学物質」における規制を懸念されています。ハラール認証の対象になるものは食品、医薬品、化粧品が代表的なものでないかと思われます。今回、私がイメージした食品の中に、インドネシアのインスタント麺で、日本でも出回っている有名なもの(イで始まります)があります。ちゃんと調べたわけではありませんが、輸出用の某インスタント麺のほうが化学的な調味料の化学的度合いが低いのだそうです(化学的度合いって何?という突っ込みはご遠慮ください。笑)。インドネシア国内では輸出用のものよりも化学的度合いの強いものが売られているというのです。
また、医薬品に関しても、人々の体験談から勝手に判断すれば、日本で売られているものよりも化学的度合いの高いものが出回っているように感じます。ですので、インドネシアは化学的なものに対する寛容度が強い印象を受けます。もっと楽観的でいいのではないかと私などは思ってしまうのですが、気になる物質が現時点で既にあるのでしたら、現状でその物質がどういう扱いを受けているか調べるのが良いと思います。
現在、インドネシアにおける唯一のハラール認証機関であるインドネシア・ウラマー協議会(MUI)が定めているハラール基準は、かなり厳しいものになっています。例えば、製品の運搬に際して使用される車両は、豚を運搬したものであってはならない、また、農作物に使用される飼料もハラールに準じたものでなければならない、といったようなものも含まれるそうです(筆者がうろ覚えしている内容なので、完全に正しいとは限りません)。
そのような厳しい「国内用」ハラール認証と同じ内容が輸入製品にも求められるかどうかは大きな疑問となります。ハラール認証義務化と聞いて、インドネシアの一般のムスリムは喜ばしいことだと思うかもしれませんが、今回のハラール法が施行されれば、現行の国内向けハラール認証基準との兼ね合いが論争されるのではないでしょうか。国際化、グローバル化を名目に、現行国内向けハラール基準が地位を失い、2つ目の認証機関となるハラール製品保証執行局の台頭によって、ないがしろにされる可能性があると私は思っています。
または、これまでも、政府全体の空気とは逆行するような決定を出してきた、インドネシア・ウラマー協議会の機能力を故意に奪っていく作戦のひとつなのかもしれません。ラベルさえ付いていれば大丈夫という風潮になり、インドネシア国内のハラール基準の厳しさ、または国民のハラールを守ろうとする意識は全体的に「甘くなる」方向へ向かっているような気がします。インドネシア国内では、これを嘆くムスリムが出てくるかもしれません。国外のノン・ムスリムにとっては、やはりビジネスチャンス以外の何物でもないと思います。