105種類もの野鳥の宝庫、ジャカルタに残る数少ない森ムアラ・アンケ
大都市ジャカルタにある意外な場所、野鳥の天国「ムアラ・アンケ」
ジャカルタでアテンドなどのお手伝いをしていると、私が今まで考えたこともない意外な質問を投げかけれらることがあります。
「ジャカルタによくいる、飛び立つ姿がカッコイイ野鳥は何なのか教えて下さい。」
東京にお住いでお得意様のN様から、突然、このような質問をいただきました。
誰がこの質問に即答することができるでしょうか。
仮にこれが、私の故郷の「岐阜界隈で、飛び立つ姿がカッコイイ野鳥は何なのか」と問われようものなら、そうですね、例えば、シラサギ、ハト、ツバメ・・・など一応、少しは答えられます。
しかし、それは私の故郷が、水田の広がる田園地帯であるから野鳥が見られるのです。
もし、「東京の都市部によくいる、飛び立つ姿がカッコイイ野鳥は何なのか」と問われたならば、答えられる人はどれ程いるでしょうか。
東京にも7年ぐらいいたことのある私ですが、思い浮かぶのはせいぜい(失礼!)カラスとかでしょうか。
・・・などなど、と心の中で思いつつ(N様、申し訳ございません!)、気を取り直し、「burung liar di jakarta(ジャカルタの野鳥)」で検索している自分がいました。
とりあえず、N様のお役に立てばいいかなと思います。
検索して出てきたのが、私にとっては聞きなれた地名「ムアラ・アンケ」でした。
105種類の鳥が舞う、野生動物の逃れ場
ムアラ・アンケといえば、ジャカルタ湾に面し、スカルノハッタ国債空港よりにある港です。
失礼ながら、イメージとしては、どんよりとしたもので、湾岸の悪臭が漂っているようなものを私は抱いていました。
ムアラ・アンケの中でも特にスアカ・マルガサトワ(Suaka Margasatwa Muara Angke (SMMA))地域が特に野鳥の宝庫だということです。
「野生動物の逃れ場」を意味するこの地には、渡り鳥もそうでない鳥も沢山いるそうで、その数なんと105種です。
鳥の名称は次のようなものです。
- pecuk-ular asia (Anhinga melanogaster)
- punai gading (Treron vernans)
- belibis kembang (Dendrocygna arcuata)
- burung-sepatu teratai (Hydrophasianus chirurgus)
4番目のBurung-sepatu terataiは体長33 cm、色は黒と白で、長い尾を持っています。
飛んだときには、白い羽が目立ちます。
この鳥は池や湖に浮かぶ蓮などの葉の上を歩くことができます。
餌である魚をついばみ、その後、近距離の別の葉の上に飛び、新しい餌を探します。
この地が植民地であった時代から、同地域は保全地域にされたことにより、都市開発による破壊から逃れてきました。
水辺である同地域は、以前はマングローブに覆われ、1939年から蘭領東インド政府により自然保護区に指定され、その面積は15.04ヘクタールに及びました。
その後、面積は拡大されたりしたものの、環境破壊などがあり、1998年にインドネシア政府が「野生動物の逃れ場」という位置づけに変更し、現在では面積の半分以上がホテイアオイという好ましくない植物に覆われた沼地に変わってしまいました。
乾季になると、沼地の水が引き、ホテイアオイも乾いてしまい、泥の中にいる小さな無脊椎動物を鳥が簡単に捕らえられるようになるので、獲物を探す様々な種類の鳥でにぎわいます。
ブルン・インドネシア鳥類保全担当者(Bird Conservation Officer Burung Indonesia)のジハド氏によると、乾季には、mandar besar (Porphyrio porphyrio)やtikusan merah (Porzana fusca)などの、ミミズや巻貝を食べる水鳥がよく見られ、blekok sawahやkuntulといった他の水鳥と一緒に混じりあっているとのことです。
水鳥の他、絶滅危惧IA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い)ランクのbluwok (Mycteria cinerea)やジャカルタ市のマスコットになっているシロガシラトビelang bondol (Haliastur indus)、elang-laut perut putih (Haliaetus leucogaster)の生息地にもなっています。
シロガシラトビは1989年、ジャカルタ市知事決定1989年第176号によって、ジャカルタのマスコットになりました。ダイナミックなジャカルタ市民のキャラクターを彷彿させる、この勇ましい鳥は、「動植物の保全に関する政令1999年第7号」に基づき、 保護動物になっています。
絶滅危惧IB類(IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い)ランクのbubut jawa (Centropus nigrorufus)というジャワ種、絶滅危惧I類(絶滅の危機に瀕している)ランクのjalak putih (Sturnus melanopterus)というジャワ-バリ種などがこの地域にはいます。
Bubut jawaはマングローブの生態系にも寄与し、現在、成鳥の総数2,500~10,000羽と推測されています。
jalak putihは体長23 cm、色は黒と白で、開けた場所で餌を探します。
つがい、または小グループで行動します。
現在、なかなか見られないようになってきており、前述のジハド氏によると、成鳥の総数は600~1,700羽と推測されています。
環境破壊が鳥にも影響
ムアラ・アンケのスアカ・アルガサトワ地域の環境は憂いある状態になってきています。
際限なく増え続けるホテイアオイ、アンケ川を漂うゴミや人が持ち込むゴミ、急速に進む周辺の都市開発などが同地域に住む鳥たちにも多大な悪影響を及ぼしています。
鳥類の保護を活動目的とする国際環境NGOのバードライフ・インターナショナルが、1988年、インドネシア共和国林業大臣決定書第097/Kpts-II/1988号に基づき指定された25.02ヘクタールのスワカ・マルガサトワ地域を、ジャワ島における重要地域のひとつとしています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
大都市ジャカルタにもこのように鳥たちが悪影響に煽られながら、自然が残っているところを探して生き残っていることが多少なるとも分かったのではないでしょうか。
普段、鳥の姿には、私も気にとめていなかったのですが、毎朝、日の出の頃になると「鳥の声だ~」という認識は持っていました。
鳥の声を聞くことによって、私もいくらか元気をもらっているなあと思います。
同じ空間に生きるものとして、決して無関心であってはならないのかなと、考えさせられました。
さて、N様がこれをお読みになって、少しでも役に立てばと思います。
この記事は↓こちらのインドネシア語サイト(2016年2月の記事)を参考にし作成しました。