インドネシアの女性が頭にスカーフをかぶる宗教的根拠とは
インドネシアに来られたことがある方なら、女性が頭にスカーフをかぶっているのを見たことがあるはず。
ジャカルタのオフィス街などを見渡すと、かぶっていない人もいるのに、かぶっている人もかなり多く、女性全体の半数を超えているのではないかと思われるほどです。
なぜ、スカーフをかぶるのでしょうか?
宗教的根拠
スカーフをかぶる第一の理由は、間違いなく宗教的理由です。
インドネシアの人口のうち8~9割はイスラム教徒です。
イスラームでは女性も男性も、それぞれ、体の隠すべき部分が決まっています。
女性の場合の根拠はイスラームの聖典クルアーン(コーラン)33章59節です。
以下、「宗教法人日本ムスリム協会日亜対訳注解聖クルアーン」より、一部の漢字をひらがなに直してご紹介します。
預言者よ、あなたの妻、娘たちまた信者の女たちにも、かの女らに長衣をまとうようつげなさい。それで認められやすく、悩まされなくて済むであろう。アッラーは寛容にして慈悲深くあられる。
ここで「長衣」と和訳されている箇所ですが、原典のアラビア語では、جلباب(ジルバーブ)の複数形ジャラービーブとなっています。
アラビア語のジルバーブは全身を覆う長衣のことを指しますが、覆わなければいけない全身の解釈が頭髪、耳、首なども含まれることにより、頭にスカーフをかぶっているのですね。
インドネシアのジルバッブ
上述のアラビア語ジルバーブを語源としたインドネシア語にジルバッブ(jilbab)があります。
しかし、インドネシア語のジルバッブは「全身を覆う長衣」という意味ではなく、「頭にかぶるスカーフ」を意味します。
「頭にかぶるスカーフ」のことをアラビア語ではحجاب(ヒジャーブ)というため、インドネシア語のジルバッブは通常、日本語訳ではヒジャーブとなります。
表にすると次のようになります。
アラビア語 | インドネシア語 | 日本語訳 | |
頭にかぶるスカーフ | ヒジャーブ | ジルバッブ | ヒジャーブ |
全身をおおう長衣 | ジルバーブ | ジュバー | ロングドレス |
ややこしいですが、ジルバーブもヒジャーブもアラビア語の同じ語幹から派生したものなので、たまたま、インドネシアでは意味のズレができてしまったのかもしれません。
かぶらない人もいるのはなぜ?
頭、首、耳を隠す、隠さないの問題は、イスラーム法的にジルバーブの解釈が異なるという一面もあることはあります。
ただ、一般大衆はそこまで難しく考えていません。
善良な多くの人々は「スカーフをかぶったほうがよい」と考えています。
かぶらない人の理由で最もよく聞かれるのは、「まだ、心の準備ができていない」というものです。
正装のときや、宗教的行事のときだけかぶる人もいます。
イスラーム学校へ通う子どもたちの中には、学校へ行くときだけ、かぶる子もいます。
子どもの場合は、まだ成人していないので義務ではありませんが、子どものときから自発的にずっとかぶる子もいます。
心の準備ができていない人でも、じょじょに慣れていくということもあります。
ただ単にファッションとしてかぶっていたり、かぶっていてもイスラームの他の義務を実行しない人もいます。
そのような人たちは、宗教的な批判の対象にはなりますが誰も強制することはできません。
いつの時代も、どこの社会でも、そのような人は普遍的に存在するものです。
インドネシアでは、スカーフ着用を義務づける強制力は存在しません。
さいごに
インドネシアに住んでいると、スカーフを着用している人のほうがムスリム社会では信用されていると感じます。
そして、着用している人にとっては、女性のプライドを守ってくれるといったプラスの面があると思います。
非ムスリムの経営するレストランなどでも、「信頼」効果を期待するのか、スカーフ着用の従業員を採用したり、従業員にはスカーフを着用させることも多いようです。
インドネシアでは、ここ20年程の間に、スカーフを着用する女性が大々的に増えました。
「お店の看板」はスカーフ着用の女性でないと、立ち行かなくなってきた一面があるのかもしれません。
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