あなたも危ない? インドネシア式「集団袋だたき」に遭遇しない方法
おだやかなインドネシアの人々ですが、「悪い人」を見つけると、ここぞとばかり集団で「袋だたき」にしてしまう事件が相次いでいます。
これは今に始まったことではなく、昔からの傾向のようです。
大勢の人が集まっている中で、「悪い人」が見つかると、集団がやっつけてしまうのです。
本当に「悪い人」であれば、まだ良いのですが、濡れ衣をかぶせられた「良い人」が標的になることもあります。
グーグルの従業員が袋だたきにされた事件(インドネシア語)(2018年7月22日のニュース)をもとに、事件の特徴を見ていき、私たちが気をつけるべきことを考えてみましょう。
デマニュースがもとで標的に
インドネシアで浸透しているSNSツールWhatsAppは、もはやコミュニケーションには欠かせない存在です。
WhatsAppのお陰でインドネシアの様々な人に連絡をすることが容易になりました。
しかし、良いことだけではありません。
WhatsAppではチェーンメッセージが送られてくることもあります。
2018年7月16日(月)、グーグル社の技術者として働くモハンマッド・アザムさん(32歳)は、 WhatsAppでのチェーンメッセージで広まったウソのニュースに感化された大衆によって袋だだきにされ亡くなりました。
アザムさんと3人の友人、サラット・エイダル・クバイシさん、ノール・モハンメッドさん、モハンメッド・サラムさんは、彼らの友人に会うためビダル・カルナタカ地方へ向かおうとしていました。
突然、彼らは集団によって行く手を遮られたのです。
誘拐におびえる人々が外国人を見て生まれた心情
その地域では子どもたちの誘拐事件がいくつか起こっていたので、住民たちは落ち着かない毎日を送っていました。
住民たちはアザムさんたちが、その誘拐犯人だと思ったのでした。
約2,000人もの集団がアザムさんと友人たちに襲いかかったのです。
アザムさんの友人のなかには、この事件で重傷を負った、カタール出身の外国人も含まれていました。
アザムさんたちは、カタールから持ってきたチョコレートを、おすそ分けの意味で、道で会った子どもたちに与えていたところを襲撃されたのでした。
子どもたちのなかのひとりが泣いたことで、アザムさんたちが誘拐犯ではないかと、大人たちが勘ぐったのです。
その地方でよく誘拐が起こることに関しては、色々な噂が流れていました。
WhatsAppのメッセージを信じた村人たち
警察によると、アザムさんたちは一度、逃げることに成功したのですが、その村の人たちが近隣の村々へ呼び掛けたWhatsAppのメッセージによって、結局、袋だたきになってしまったのでした。
怒った大衆が占領する道路の境界に、アザムさんたちの車は衝突し横転。
アザムさんたちは車から引きずり出され、棒や石で殴られました。
その時、撮影されていた動画によると、ひとりの警察官が、アザムさんたちを殴らないように大衆に対して呼び掛けたのですが、逆に警察官たちも大衆に殴られる対象になってしまったのでした。
アザムさんたちを助けようとした警察官3人が負傷しました。
この騒ぎは1時間ほど続いたとのことです。
デマを広めたのもWhatsAppですが、犯人をつきとめるきっかけになったのもスマホで撮影された動画だったということです。
警察による事件の成り行き
↓バンテン州地方警察のインスタグラムより(事件とは関係ありません)
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- アザムさんと3人の友人は、ビダルで開催される行事でひとりの友人に会うため、ハイダーアバッドを出発。帰路、彼らが購入しようとしていた土地を見るため、寄り道をする。
- ムルキ・ビレッジの学校の近くで、お茶を飲み休憩。学校から子どもたちが帰宅していくのを見た、アザムさんのカタール人の友人サルハムさんが、子どもたちにチョコレートを分けてあげた。
- 外国人たちがチョコレートで子どもたちを釣っているのではないかと、住民が疑い、アラームを鳴らせたことで、人々が集まってきた。
- 危険を感じたアザムさんたち4人は、車に乗り、その場を去った。その時、村の人々はすでに撮影した動画や写真をWhatsAppでいくつかのグループへ送っていた。
- WhatsAppで送られたメッセージとビデオが広がり、アザムさんたちが隣村を通った時には、村人たちが全ての道を木で塞ぎ、車は住民たちに取り囲まれた。
- 運転していたアザムさんは塞がれた道とは別の方向へ行こうとしたが、車は溝に転落。怒りに満ちた住民たちが、彼らを車から引きずり出し、容赦なく殴った。
- 2人の警察官が現場に駆けつけたが、集団によって殴られている4人に近づくことはできなかった。
罪もない通りがかりの人が袋だたきで命を落とす
アザムさんは現場で亡くなり、3人の友人は重傷でした。
2日後、カルナタカ警察署は32人の容疑者を逮捕しました。
そのなかにはWhatsAppグループの管理者と何人かの女性が含まれていました。
インドでもWhatsAppグループの流したウソのニュースが引き金になり、20人が重傷を負った事件があるそうですが、事の成り行きは似ていて、子どもの誘拐事件に神経をとがらせていた人々の怨念が、罪のない人に向けられてしまったのです。
人ごとではない恐ろしさ
このようなことが繰り返し起こらないように、インドネシア政府は、何度も警告を鳴らしているそうです。
ですが、WhatsAppなどで受信される、こういったニュースの真相を知ることなく、盲目的に信じてしまうケースは多いようです。
WhatsAppの側も、グループの管理者がチェーンメッセージを装うメッセージを制限するための、フィルター機能を提供しているそうです。
メッセージを他の人にシェアするときに、使われる機能です。
しかし、まだまだ、こういった努力が成果を上げているとは言えないのが現状です。
私たち外国人が気をつけること
私たち外国人は、見た目が他の人々と違うので、すぐに人目に付きます。
濡れ衣をかぶったり、人々の怨念をかったりしないように、特別な注意が必要です。
注意事項を次のようにまとめてみました。
- 挑発的な服装をするなどして目立たない(風紀をこわさない)
- 目立つ車で小さな集落を闊歩しない(横柄に見られないように)
- 知らない子どもに物をあげない(子どもの誘拐にはとても敏感)
- 正当防衛できる語学力を持つ(黙ったら非を認めることになる)
- 困ったときは、人々の感情に訴える(理念より感情)
さいごに
私たちが外国人だというだけで目立ってしまうのは仕方がないことです。
その分、日々の行動に気をつける必要があると思います。
筆者もWhatsAppでデマを受け取ったことがあります。
どこそこで奨学金プログラムをやっているので、希望者はどこそこへ問い合わせてください、という内容のものでした。
必要とされている情報かもしれないと思って、知人に転送してしまいました。
幸いにも知人が内容がおかしいことを見破ったので、被害はありませんでしたが、私は恥ずかしくなりました。
常に情報元はどこかということに気を付けていれば、他の人を巻き込むこともなかったでしょう。
私たちが加害者、被害者のどちらにもならないように、以上、参考になれば幸いです。