インドネシアの子供たちが歴史の授業で勉強する『日本の征服』

フレンドリーで笑顔を絶やさず、情が熱いインドネシアの人々。

インドネシアは親日国と言われています。

一方、インドネシアの子供たちは歴史の授業のなかで、日本が過去にインドネシアを征服したことを学んでいます。

過去のことをとやかく言わないのは、いつも前向きなインドネシア人の大きな特徴のひとつかもしれません。

彼らが一体どのように「日本の征服」のことを学んでいるのか、見ていきましょう。

日本がインドネシアを征服した背景を説明しなさい

インドネシアの子供たち向けの学習サイトhttps://brainly.co.id/tugas/699592では、「日本がインドネシアを侵略した背景を説明しなさい」という問題がでています。

この問題に対し、閲覧者が回答を書き込めるようになっていて、回答の中からベストアンサーが選ばれます。

上の問題に対するベストアンサーは中学3年生の子が書いたとされる、次のようなものでした。(以下、意訳)

明治時代以降、第一次世界大戦において大勝を納めた日本が、アジアの新しいパワーとして台頭しました。

日本はアジアを征服する目標をかかげたのです。

そのため、日本政府は3Aのスローガンによる大東亜共栄圏構想を唱えました。

3Aとはアジア(Asia)のAを意味したもので、次のとおりです。

  1. 日本はアジアの光である
  2. 日本はアジアの保護者である
  3. 日本はアジアの指導者である

上記の目標を達成するため、日本はやって来て、インドネシアのような元植民地であった地域を征服しました。

現地住民に受け入れられるように、ファシスト(ファシズム主義者:権力で労働者階級を押さえ、外国に対しては侵略政策をとる独裁制主義者)である日本政府は、3Aのスローガンと対帝国主義のための政治的宣伝、または挑発によって、大東亜共栄圏構想を教えました。

日本の構想は確かに、すばらしいように見えますが、本当は、インドネシアに対する日本の征服などにおいては、単なるトリックにすぎませんでした。

第二次世界大戦で弱体化し、オランダ領東インド(ほぼ現在のインドネシアの部分)に残っていた、オランダ兵と戦うためにやって来た日本は、インドネシアの人々に受け入れてもらうため、インドネシアの独立を約束したほか、大東亜共栄圏構想を教えました。

しかし、実際にはそれは虚構でした。

当然のことながら、日本はインドネシアを植民地にすることを目指していました。

なぜならば、彼らがアメリカやイギリスに対して行っていた太平洋戦争で、インドネシアの自然資源が役立つからでした。

オランダはアメリカやイギリスの同盟国でもあったため、インドネシアが征服の標的になったのです。

このような回答がベストアンサーに選ばれているので、インドネシア人の認識としては、正しいのだと思います。

日本の政治的宣伝

日本がインドネシアで行っていたという政治的宣伝について、こんな動画を見つけました。

1942年のものだそうです。

いきなり、NIPPON EIGASHA DJAKARTAという文字が目に飛び込んできます。

「ジャカルタ日本映画社」ということだと思います。

視聴してみると、男性によるインドネシア語の力強い音声で「大日本(だいにっぽん)」という言葉が頻繁に聞こえてきます。

大日本の兵隊の活躍を説明しているようです。

このような宣伝映画を作成していたのですね。

日本兵として徴用されたインドネシア人

「インドネシア人日本兵」が、日本語で宣誓のようなものを読み上げている動画を見つけました。

このような動画は探すと色々と出てきます。

今、インドネシアの若い人々がどこまで、このような時代があったことを意識しているかは、調べてもいないので断言はできません。

ただ、外国のことを知らないで祖国に生まれ、祖国で育ってきたインドネシア人が初めて「日本」を意識しだしたのが、歴史の授業で「日本による征服」を習ったときだったというパターンもあるかもしれません。

20年ほど前、私はジャカルタのインドネシア人(おそらく20歳代)に「日本人と聞いてどう思う?」と聞いたことがあります。

その答えはなんと「残酷」というものでした。

歴史的背景などはあまり意識していなかった私は、あっけに取られてしまいました。

普段はニコニコしている人から、「残酷」という言葉を聞き、本当に驚きました。

理由を聞いたところ、日本による征服時代の印象が強いから、ということでした。

さいごに

日本の中学校で歴史の先生だった父が、インドネシアに遊びに来た時、こちらのやさしい人々に触れるたびに言っていたことがあります。

「インドネシアは日本のお陰で独立できた。だから、インドネシアの人たちは日本を神さまのように尊敬している」というものです。

こちらの人々は、基本的に人を許し、過去のことはネチネチと問わない前向きな性格です。

私は20年以上のインドネシア滞在でそのことを体感してきたので、父の言うことはもちろん正しくないと思っています。

インドネシアの人々に良くされれば良くされるほど、図に乗ったり、つけあがらないように、私も気をつけようと思います。

特に怒鳴ったり、大声を出す(たとえ自分の子供に対しても)のは、昔の日本兵を連想させる、恥ずべき行為のようなので気をつけています。

時々、人に怒鳴ったりする日本人の方をインドネシアでもお見受けするのですが、その度に私も気まずい気持ちになってしまいます。

 

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