インドネシアの女子中高生1600人が熱演!アジア大会開会式の集団舞踊

2018年アジア競技大会の主催国になったインドネシア。

8月18日(土)の夜、首都ジャカルタのブン・カルノ競技場において、その開会式に花を添えたのは、ジャカルタじゅうから集まった女子中高生舞踊家1600人による舞踊でした。

この舞踊はインドネシア、アチェ州発祥でラトォー・ジャロ(Ratoeh Jaroe)舞踊と言います。

2011年にユネスコが無形文化遺産委員会において、この伝統舞踊を緊急保護リストに登録したようです。

女性が列になって並び、手、腕、肩、頭などを激しく動かしながら、座ったまま踊るのが特徴です。

踊り子同士が息を合わせ、隣同士がぶつからないギリギリの絶妙なタイミングで動くので、とてもエネルギッシュ。ユニークな踊りです。

以下に紹介していきますね。

1.アジア競技大会で話題になったアチェ州の踊り

こちらがアジア競技大会で話題になった踊りです。SCTVというテレビ局が公開したものです。

Assalamu’alaikum, kami ucapkan..という歌で始まっています。

これを訳すと「アッサラームアライクム(あなた方に平安がありますように)と私たちは言います・・・」という感じでしょうか。

アッサラームアライクムという言葉は、ムスリムが8割を超えると言われるインドネシアでは、インドネシア語の中にすっかり溶け込んでいますが、実は世界中で使われているムスリムの挨拶の言葉であり、もともとはアラビア語です。

この舞踊発祥の地であるアチェ州は、インドネシアで初めてイスラームが伝わった地と言われ、インドネシア建国以前にはアチェ王国というイスラーム王国があったそうです。

2.高校で行っていた練習風景

こちらは、ジャカルタの国立第90イスラーム高校がアジア競技大会のために行っていたと思われる映像です。もしくは、最終リハーサルという感じですね。

アジア競技大会で踊った中学生の女の子が、あるテレビ番組の中で話をしていました。

出場するにはオーディションがあったり、踊りのために首が痛くなったり、踊っている時に指が隣の子の目を突いてしまったり、逆に突かれてしまったりと、練習はかなり大変だと言っていました。

他の地方ではどうか知りませんが、ジャカルタの高校では近年、このアチェ舞踊のクラブがあることが多いです。ユネスコの登録と関係しているのかもしれません。

インドネシアは国をあげて、この踊りを保護しているのでしょう。

14年前の2004年12月にスマトラ沖地震による津波で、インドネシアのアチェ州は最も被害を被りました。その被害で亡くなった人の数は20万人(2万人ではないので念のため)を超えたと記憶しています。

州都のバンダアチェ市の人口でさえ、239,146人のうち61,265人が亡くなった(出典:インドネシア語https://sains.kompas.com/read/2014/12/23/15591981/Jejak.Keberulangan.Tsunami.di.Aceh)とされていて、4人に1人が亡くなったことになります。

人口の25%が失われたとすれば、伝統文化の継承者激減が心配されるのもうなづけますね。

3.最低9人以上から上演可能

アチェ舞踊は最低9人以上から上演依頼が可能。伝統的なものは指揮者がアチェ語で歌を歌いながら指揮します。

アチェ舞踊は最低9人以上から上演依頼が可能。伝統的なものは指揮者がアチェ語で歌を歌いながら指揮します。

以前、アチェ舞踊チームのリーダー(指揮者)の方に話を伺った時は、アチェ舞踊ラトォー・ジャロは、必ず奇数の踊り子さんが踊る決まりなのだということでした。

イスラームでは奇数が良いとされているからかもしれません。

ラトォー・ジャロは複数の踊り子さんがあってこその踊りなのですが、3人、5人、7人では見栄えがしないので、最低でも9人が良いとのことです。

ただ、アジア競技大会では1600人だったので、偶数ですよね。おおよそ1600人ということなのかもしれませんし、こんなにも大勢の場合は偶数でも奇数でも分からないし、まあ良しとなるのかもしれません。

1600人で驚いてはいけません。2016年にはミニインドネシア公園として知られる、東ジャカルタのタマンミニで6600人によるラトォー・ジャロ舞踊がありました。

次の動画が6600人集団舞踊のものです。ご覧になれば迫力が伝わってくるかと思います。

まとめ

女子高生のクラブ活動としても人気のラトォー・ジャロ舞踊を見られた感想はいかがだったでしょうか。

アチェ舞踊の中ではサマン舞踊のほうが、名前としては良く知られています。サマン舞踊とラトォー・ジャロ舞踊は混同されやすいようです。

私の調べた限りでは、サマン舞踊はアチェ州の中でもガヨ地方を起源としていて、男性の踊りと女性の踊りがあるようですが、ラトォー・ジャロ舞踊は女性だけの舞踊であることが特徴です。

国立シャー・クアラ大学民族音楽学者のアリ・パハラウィ氏によると、ラトォー(Ratoh)は「踊る」、ジャロ(Jaroe)は「手、または手の指」で、ラトォー・ジャロはつまり「踊る手」という意味なのだそうです(出典:インドネシア語https://aceh.tribunnews.com/2018/08/21/perbedaan-tari-saman-dengan-ratoeh-jaroe-yang-disajikan-di-pembukaan-asian-games-2018)。

多分、これらはアチェ語だと思います。アチェ語はインドネシア語とは違うので、私などは聞いていても1割ぐらいしか分かりません。国立シャー・クアラ大学にはインドネシア国内唯一(おそらく)のアチェ語(アチェ文学)学科があるようです。

アチェ舞踊にアチェ文学。インドネシアにも様々な文化があるので、色々と体験してみるのも面白そうですね。

 

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